PixCell_Saturation

ミクストメディア
h: 270, w: 526, d: 526 cm
2004


 

 

水槽を使った作品のアイデアはボールペンによるドローイングから派生した。

撥水加工の施された紙の上で水性ボールペンのゲルインクをころがし、粒と線によって編みこむように描くドローイング。インクは支持体の上を滑りながら表面張力によって集まり、盛り上がったまま固まる。この際に紙の表面で水を弾いていたのが今回の作品に使用しているものと同じ「シリコーン」の塗膜だった。

有機物と無機物の中間的特性を持つ「シリコーン」は天然には存在せず、撥水性のほか、耐熱性、耐寒性、耐候性、電気特性など優れた特徴がある。また、分子のつながり方によって、オイル、レジン、ゴム、液状ゴムなど多様な形態を持つ。私が「シリコーンオイル」に注目したのは何よりもその質感が独特だということに加え、揮発せず、水に比べて表面張力が極めて小さいので特異な界面特性を発揮するところである。少量で界面に広がって泡を消す働きがあるため、様々な分野で消泡剤、整泡剤として「泡」のコントロールに利用されている。

昨年発表したPixCell-(White)という水槽を使った作品は、水に少量の界面活性剤を入れ、そこへポンプから空気を送って水面に漂う「泡」を鑑賞するものだった。とめどなく現れては消えてる泡が細胞のような有機的なイメージを生み出しつづける、まるでイメージの生まれる母体そのもののようだった。しかし、今回のPixCell_Saturationはもう一段階ラディカルなところを目指しており、解釈や意味を突き抜けて感覚の原理に近づくことができるのではないかと思う。

スクリーンのように白く発光する水面に現れる無数のCell。ハイスピードで絶えず代謝し続ける大量の泡の刺激はある飽和点を超えると、見ている者に対し麻酔のように作用する。生成するCellは、リアルな「麻痺感」を伴うのだ。